ごあいさつ
この度、第36回日本疫学会学術総会の会長を仰せつかり、2026(令和8)年1月28日(水)~30日(金)の 3 日間にわたり、出島メッセ長崎にて、同時に開催させていただくことになりました。今回の総会は、第3回国際疫学会西太平洋地域合同学術集会も併せて実施いたします。海外からの疫学者をお迎えすることになることから、使用言語を英語とし、広く海外からの参加者を募るとともに、日本の学術界の国際化にも貢献して参りたいと思います。
疫学は、集団を対象として健康事象の分布と発生を記述すること、さらには、健康事象の発生と経過に関連する因子を探ることにより、予防や医療、さらには、政策決定における科学的根拠づくりに貢献する学問です。現代疫学は、対象集団の大規模化や遺伝、代謝、行動、環境などの多岐にわたる要因を網羅するデータベースの構築や診療データ等のリアルワールドでの解析、新しい因果推論手法の開発などもあり、新たな局面を迎えています。また、新型コロナウイルス感染症パンデミックを代表とする地球規模に拡大する感染症問題の再提起、さらには、世界各地で繰り返される紛争や地球温暖化による異常気象や災害発生に端を発する健康問題、多様化する生活習慣や環境、地域や貧困格差など、我々を取り巻く世界は実に多様な健康問題が存在し、我々疫学者はこれらの複雑化した状況を読み解きながら、解決に向けた根拠を提示する義務があります。
そこで今回の総会並びに合同大会のテーマを「Epidemiology and Global Issues: Addressing Diversity, Complexity, and Inclusion」といたしました。国内の健康問題のみならず、その目を海外にも向け、多様で複雑な健康問題を貧富の差なく検討すること、そして、国際的なネットワークとして、疫学研究を展開し、グローバルな健康問題解決に向けた機会にしたいと考えています。
日本疫学会は1991(平成 3)年に設立され、会員は、保健医療福祉領域の教育研究機関、医療機関、衛生行政機関、産業保健機関、福祉機関など国民の健康と安寧を護る機関において、教育、研究あるいは実践に従事しています。会員の職種は、医師、歯科医師、薬剤師、看護師・保健師、栄養士、リハビリテーション専門職等の医療介護専門職だけでなく、統計学、心理学、社会福祉、社会科学の研究者など多領域です。会員数は2,600人を超え、学術総会には1,000人を超える会員が参加します。
第36回学術総会・合同集会の開催形式は、現地参加を基本とし、一部のセミナーなどをオンライン参加も可能とする予定です。本来、学術総会の運営は出席者の参加費から賄うべきところですが、昨今の経済状況を鑑みますと費用の高騰が危惧される状況です。つきましては貴社・貴団体におかれまして、本学術総会の趣旨にご賛同いただき、運営のために格別のご高配を賜りますよう、謹んでご依頼申し上げます 。
第36回日本疫学会学術総会・第3回国際疫学会西太平洋地域合同学術集会
会長 金子 聰
(長崎大学熱帯医学研究所生態疫学分野 教授)